連携自治体の実務者間の意見交換会を実施
―EBPMなど大学との連携テーマ探る
茨城大学は、「イバダイ?ビジョン2030」で「地域と世界の結節点となり、市民と連携した活力ある地域社会の形成」という目標を掲げています。社会連携センターで実施している「茨城大学と連携協定先自治体との実務者間意見交換会」もまさに「結節点」を目指す取り組みのひとつです。毎年、本学が連携協定を締結している茨城県内の自治体の実務担当者のみなさんにお集りいただき、県?市町村の枠を超えた交流を行っています。
令和5年度の「茨城大学と連携協定先自治体との実務者間意見交換会」は、9月27日に懂球帝,懂球帝直播の社会連携センター研修室で開かれ、本学が連携協定を締結している県内の自治体から12市町村の職員の方にご参加いただきました。3つに分けられたテーブルには、社会連携センターの教職員と同センターの学生パートナーのメンバーも加わり、活発な意見交換が繰り広げられました。
前半は社会連携センターの中村麻子センター長から、大学との連携に関する具体的な制度として、共同研究や受託研究、相談者に対して大学の研究者が指導?助言を行う学術指導などの仕組みを紹介。「いきなり『研究』というとハードルが高いかも知れませんが、まずは『学術指導』制度を利用してみて、その後、共同研究や受託研究を組み合わせていくことも可能です」と説明しました。あわせて、連携協定締結団体が教員や学生と協働して行う地域課題解決の活動をサポートする「地域支援プロジェクト」も紹介しました。
中村センター長は、「連携締結がゴールではなく、いかに活用していくかが大事。ぜひいろんな制度を利用いだければ」と呼びかけました。
その後、地域支援プロジェクトの具体例として、全学教育機構の瀬尾匡輝准教授が、阿見町と一緒に取り組んでいる「国際化プロジェクト」について報告しました。
日本語教育?外国語教育を専門とする瀬尾准教授は2015年に茨城大学の教員となり、当時引っ越してきたばかりの阿見町に貢献できることがあればと、阿見町国際交流協会の会員となりました。そこで、国際交流協会の会員や参加者の高齢化、イベントに参加する在留外国人の参加の少なさといった課題に触れ、茨城大学の留学生や日本人学生が活動に関われるような手立てを模索してきたと言います。
当初は公益財団法人の助成を受けて、留学生が自国の文化を紹介するイベントや、在留外国人に向けた地域住民による日本語講座などを行ってきました。その後、2020年度からは社会連携センターの茨城大学地域研究?地域連携プロジェクト(2023年度に「地域支援プロジェクト」に変更)に採択され、阿見町の国際化?外国人支援についての円卓会議、アンケート調査、交流イベントや外国にルーツをもつ子どもたちへの学習支援など、活動を広げていきました。
瀬尾准教授は、「個の取り組みから徐々に輪が広がっていった。活動を継続していくことで、新たな課題が見つかり、活動を深めることができる」と振り返りました。
後半は意見交換会を実施。中村センター長、岡山毅副センター長、中田潤副センター長がそれぞれ進行役を務め、それぞれの自治体が抱えている地域課題や、連携活動のテーマについて話し合いました。
それぞれのテーブルから聞こえてきたのが、「EBPM」という言葉です。これは「Evidence Based Policy Making」のことで、経験や勘ではなく、科学的な根拠(エビデンス)をもとにした政策形成のこと。自治体の担当者からは、「国もEBPMを進めることを求めており、今後自治体でも重要になる。どう進めれば良いか」「私たちは統計学も勉強しておらず、どうしてもエピソードベースドになってしまう」といった声が聞かれました。特定の政策テーマについて、学術的なエビデンスが必要となる場合、大学の研究者との協働が求められる場面は確かに増えそうです。
その他意見交換会では、自治体側は人口減少や少子高齢化という課題を踏まえ、若い世代の地域参画や若者の視点を重視しており、他方で学生たちも連携活動に主体的に関わりたいと考えているものの、マッチングや定着に課題があるということが浮き彫りになってきました。そうした課題を踏まえ、ある自治体の担当者からは、「テーマを決めたフォーマルな場だけでなく、学生と自治体職員がざっくばらんに交流できるような場もあると良い」という意見もありました。
今回提案のあったようなアイデアもさっそく実現に向けて検討するなど、茨城大学としては引き続き地域社会のハブとしての役割を果たしていくべく、取り組みを進めていきます。