茨城県学生ビジネスプランコンテスト2023で本学学生チームが最優秀賞を受賞
―干し芋残渣削減プロジェクト(HZP)の大嶺さん?礒崎さんにインタビュー
昨年(2023年)11月、茨城大学において「茨城県学生ビジネスプランコンテスト2023」が開催され、本学教育学部の学生らで構成する「HZP(干し芋残渣削減プロジェクト)委員会」が最優秀賞を受賞しました。茨大広報学生プロジェクトの柴田芽依さん(人社1年)がインタビューしました。
2023年11月23日(木)に茨城大学懂球帝,懂球帝直播で、「茨城県学生ビジネスプランコンテスト2023」の最終審査が開催され、本学教育学部家庭選修4年の大嶺友菜さん、礒崎瑠花さんの「HZP(干し芋残渣削減プロジェクト)委員会」が、「未来にいいもの ほしいもの!~美味しいはしっぽで東海村を笑顔に~」というプランを提案し、最優秀賞を受賞しました。
「茨城県学生ビジネスプランコンテスト」とは、学生のアントレプレナーシップを育むこと、企画力や課題発見?解決能力の育成を目的としたコンテストです。中学生以上の学生であること、かつ応募者が茨城県内に在学?在住しているか、提案するプランが県内を拠点?テーマにしたものであることが、応募の条件となります。
今回は93件の応募があり、一次審査(書類審査)により上位8チームが最終審査に進みました。
最優秀賞を受賞した大嶺友菜さんと礒崎瑠花さんに、プロジェクトの内容やコンテストに参加した経緯、最優秀賞を受賞したときの気持ち、今後の展望などを伺いました。
―コンテストでは、どのようなプランを提案しましたか。
大嶺「干し芋残渣を食用にアップサイクルするプランです。干し芋を生産する際、材料の約4割が残渣となり、東海村では年間約920トンが廃棄されます。この残渣の活用を目指すHZP(干し芋残渣削減プロジェクト)の活動をビジネスプランとして発表しました。
このプランでは、まず生産者に対して意識調査を実施し、それによって活動の意義を示しました。さらに、教育的アプローチを行っていることが主なポイントです。
教育的アプローチは、残渣のイメージ向上と学生の地域参画力向上の二つの観点から行いました。
まずはイメージ向上に向けた活動を行いました。現状では、干し芋の残渣に汚い印象を持っていたり、食べられるとは思っていなかったりすることが多いので、残渣を活用した商品を買ってくれる人は少ないと考えました。そのため、小学生や中学生を対象に講演会を行い、残渣は茨城県の地域課題であることや、栄養価が高くおいしく食べられることを周知しました。
また、大学生の地域参画力を高めるための企画も実施しました。大学生に干し芋残渣を活用したレシピを考えてもらい、商品化したものを茨苑祭や東海村のイベントなどで販売しました。これは、地域課題に対してどう向き合うかを考える力を育成することを狙いとしています。アイスの商品化に向けて実食会を行い、小学生などに実際に食べてもらいました。多くの人に買ってもらうためには、実際に食べて、おいしさを知ってもらうことが大切だと思います。
茨城大学生協でもアイスとかりんとうを販売しています。大学生の皆さんにも是非食べていただいて、干し芋残渣の魅力を知ってほしいです」
―プロジェクトに参加したきっかけは何ですか。
礒崎「教育学部の石島恵美子先生からの紹介がきっかけです。教育学部家庭選修と東海村の企業が連携したプロジェクトが発足することを聞き、興味を持ったので参加しました。当初は干し芋の製造過程で残渣が出ることを知りませんでした。想像以上の食品ロスが発生していると聞いてとても驚きました。私は家庭科教員になるので、このプロジェクトに参加したいと思いました」
大嶺「私は地元が東海村だったこともあり、興味を持ちました。私も以前は残渣の問題について知らなかったので、地元の課題を知って驚きました。東海村でもかなりの量の残渣が出ていますが、ひたちなか市はさらに5倍の量の干し芋を生産しているので、残渣の量はとても多いと考えられます。これをどうにか削減し、地域に貢献したいと思って参加しました」
―コンテスト出場にあたり、苦労したことは何ですか。
大嶺「伝えたいことが多すぎて、発表時間に収めることが大変でした。まず干し芋残渣とは何か、どのようにして出るのか、栄養価や衛生面に関する説明が必要です。それからプランの事業内容や顧客、社会に与えるインパクト、将来の展望性も加えなければならないので、どうしても時間内に収まりませんでした。なるべく簡潔に伝えることと、スライドを工夫し視覚的にも説明することで解決させました。
また、収支計画を立てることにも苦労しました。プラン自体は私たちがすでに活動していることの延長線を考えればよかったのでそれほど苦労はしませんでした。しかし元々慈善事業のように活動していたため、ビジネスとして収支計画を新たに立てることが難しかったです。持続可能な会社づくりのために、収入の見込みや支出の発生を細かく考えることが大変でした。プロジェクトを運営する会社や、ビジネスに詳しい先生のアドバイスをもとに進めていきました」
―最優秀賞を受賞したとき、どのように感じましたか。
大嶺「今まで私たちがやってきたことがビジネスとして認められてうれしかったです。プロジェクトの活動が多くの人に認められてもらった最優秀賞だと思うので、みんなの頑張りが認められたのはすごいことだと感じました」
礒崎「自分たちの活動に自信が持てました。コンテストの当日は別のイベントとかぶってしまって登壇することはかなわなかったのですが、最優秀賞を受賞したと聞いたときはとても嬉しかったです。以前は自分たちの活動に対し、なんとなくいいことをしているのは理解している一方、周囲の評価やビジネスとして成立できるかなどに対し不安を感じていました。自分がしてきたことが周りから評価されて、正しいことをしていると改めて思えたので良かったです」
―今後の展望はどのように考えていますか。
大嶺「商品化できる製品を増やしていくことと、販売拠点を増やすことを考えています。今はアイスとかりんとうを主に販売していますが、水戸市内の天ぷら屋さんや鹿嶋市の老舗和菓子屋さんとコラボさせていただいて、新しい商品の開発が進んできています。これらをどこで販売するかが今の課題ですね。特に大学生主体で売れる販路を拡大したいです。
私たちは卒業して就職するので、プロジェクトの活動に関わる機会は減ってしまいますが、後輩たちに引き継ぎますので、イベントへの参加や、お手伝いなどの形で協力したいです」
―学生の皆さんへ伝えたいことはありますか。
大嶺「まずは、アイスやかりんとうを食べて、干し芋残渣の魅力を知ってほしいです。食べることを通して、環境やSDGsについて考えたり、環境に配慮した行動を自分で考え直したりするきっかけにしてほしいです。
また、ビジネスは特別なことではないので、勇気を踏み出してほしいです。今回のコンテストに参加したことや、他のファイナリストの発表を聞いたことを通して、自分がやってみたいことや興味があることから発想を膨らませれば、何でもビジネスになると学びました。やってみるとすごく世界が開けるのではないかと思います。そして、やるなら早い方が絶対にいいです。始めるのが遅いと夢半ばで終わってしまうので。起業を考えている人は1?2年生のうちから構想して、4年生の時にはもう起業して活動するくらいのスピード感を持つと良いと思います」
干し芋残渣削減プロジェクト(HZP)委員会
HZPは、茨城大学教育学部家庭選修などに所属する有志の学生たちで組織するプロジェクトです。茨城の名産品である干し芋の生産過程で生じる残渣を「はしっぽ」と名付け、その利活用を通じた食品ロス削減をめざして、企業と連携したレシピや新製品の開発、東海村の学校と連携した教育活動などを行っています。
【メンバー(2024年3月現在)】
大嶺友菜?礒崎瑠花?大高来美?河野莉緒?坂佐井朋佳?鈴木柚?中里乃菜?林田優?中村美咲
編集後記
起業やビジネスと聞くと、なんとなく難しそうで、遠い世界の話だと感じていました。インタビューを通して、自分の好きなことややりたいこと、専門としていることをもとに、試行錯誤しながら進めることが大切だと学びました。興味があることはとにかくやってみて、次につなげることを心がけたいです。
(取材?構成:茨大広報学生プロジェクト 柴田 芽依(人社1年))