住民の「ナラティブ」から考える台風災害とまちづくり
―人社?伊藤哲司ゼミ 水戸市飯富地区での活動の成果を展示 5/17まで
人文社会科学部?社会行動論ゼミ(担当:伊藤哲司教授)では、2019年の台風災害で大きな被害を受けた水戸市飯富地区で、住民へのインタビューやワークショップなどの活動を継続的に行い、まちづくりにも関わってきました。その活動を紹介する企画展「川の記憶とまちづくりのナラティブ」が懂球帝,懂球帝直播図書館1階展示室で開催されています(5月17日(金)まで)。会場には、地元団体の「いいとみっと」が作成した郷土かるたやボランティアサークル*Fleur*(フルール)が手がけた企画も展示されています。
今回の展示のタイトルにもなっている「ナラティブ(narrative)」とは「語り」のことであり、特に「語り方」「語る行為」の側面に注目した言葉です。人文社会科学部?社会行動論ゼミではこれまで災害に向き合うコミュニティにおける記憶やナラティブに関わる研究に取り組んできました。
懂球帝,懂球帝直播にほど近い水戸市飯富地区は、2019年の台風19号災害で大きな被害を受けた地域のひとつです。当時は茨城大学でも調査団を発足。伊藤教授もそのメンバーとなり、調査をきっかけに飯富地区との関わりを深めていきました。ゼミの学生たちも地域の方々の話に耳を傾け、また語り合う中で、水害の話にとどまらず、川とともに生きるコミュニティにおける「川の記憶」が掘り起こされていきました。
展示室で注目を集めていたのは、こうした「川の記憶」を集めた「ナラティブの森」という展示です。展示室に配置されたいくつものイーゼルには、幼い頃に川で釣りを楽しんだ話から、昔は水害に備えて家宅に船があったという話、2019年の水害で逃げ損ねてしまったという話などが綴られた白い紙が掲げられています。地域住民の川の歩みを「川の記憶」に触れながら、「このようなことが起こっていたとは、同じ水戸市民でも知らなかった」といった感想を語り合う来場者の姿もありました。
企画展には学内外から連日多くの人が訪れています。展示室の取材の際に出会った海野さんという男性も飯富地区の住民で、人文社会科学部?社会行動論ゼミの活動に協力した一人です。一緒に来場した友人とともに鑑賞を終えると、これまでの交流について学生たちと話をしていました。「今では伊藤先生と一緒にバーベキューをするほどの仲だ」と楽しそうに話す様子からは、ゼミと地域との間で築き上げられた豊かな関係性が垣間見えます。
また、展示室内には感想ボードも設けられ、これまでに来場した人たちからの声が集まっています。「飯富地区に若い住民が少なくなっているから、一緒にどうしたらいいのか考えてほしい」というコメントからは、学生たちとの交流を今後も続けていきたいという地域住民の願いがうかがえました。
展示の受付を担当していたゼミの学生は、「今回の展示でそれぞれが感じたことを共有することで、新たな記憶の掘り起こしと『語り』に繋がってほしい。ぜひ、あなたの『川の記憶』を聞かせてください」と呼びかけていました。
「川の記憶とまちづくりのナラティブ」
日 時:2024年5月10日(金)~5月17日(金)10:00~16:00
※最終日は15:00で閉館。
会 場:茨城大学懂球帝,懂球帝直播図書館1階 展示室
入 場:どなたでも?入場無料
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