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"世界最古のオーケストラ"荘厳な調べを堪能、演奏体験も
-雅楽体験ワークショップ

 千年以上前から受け継がれている日本古来の伝統芸能?雅楽。外国人留学生をはじめ、多くの学生?教職員に素晴らしい文化を知ってもらおうと、茨城大学懂球帝,懂球帝直播講堂で2024年12月10日(火)、特定非営利活動法人日本音楽国際交流会の協力により雅楽体験ワークショップが開催されました。プロの雅楽奏者11人が生演奏を披露したほか、雅楽の歴史や楽器の演奏の仕方などを解説しました。参加者は聴覚だけでなく視覚、感覚...と全身で雅楽を楽しみました。

雅楽演奏の様子

 雅楽は管楽器の笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)、弦楽器の琵琶(びわ)、(そう)、打楽器の鞨鼓(かっこ)、太鼓(たいこ)、鉦鼓(しょうこ)-の8種の楽器を基本として編成され、その演奏形態は「世界最古のオーケストラ」とも呼ばれます。千年以上昔から受け継がれている日本古来の伝統芸能で、現代でも全国の神社や宮中祭祀において重要な役割を担っています。

 このワークショップは当初、日本体験学習の授業を履修する外国人留学生のために企画されました。しかし、日本国内学生も雅楽の生演奏を聴く機会が限られていることなどから対象を拡大し、当日は135人の学生?教職員が訪れました。

演奏家の皆さんの写真

 ワークショップは三部制。
 第一部は、雅楽の歴史?楽器の紹介、雅楽を会得するための唱歌(しょうが)の体験などを行いました。鞨鼓奏者の三浦礼美さんが、雅楽ははるか昔から日本に伝わってきた歌や舞に中国や朝鮮から渡来した音楽などを取り入れて完成したことや、これほど長い歴史がありながら一般庶民に広まったのは明治政府による「明治撰定譜」の編纂以降であることなどを解説しました。

 楽器紹介では、それぞれの楽器の奏者が楽器の名前や由来、どんな音がするのかなどを説明、実演しました。続く唱歌体験は、最も有名な楽曲「越天楽(えてんらく)」の楽譜を使用して行いました。奏者の手本に倣って、右手で拍子を取りながら「チ~~ラ~~ロ~ル~ロ」(篳篥の楽譜)などと口ずさみ、第二部で挑戦する演奏体験の予習をしました。

楽器を説明している様子

 第二部はいよいよ演奏体験。8種のうち、弦楽器を除く6種を体験しました。
 まずは留学生5人が笙に挑戦しました。笙は17本の竹が束ねられていて、吹き口に近い位置にある小さな穴を押さえて演奏します。同時に複数の音を鳴らすことができ、音色はパイプオルガンのようです。息を吸っても吐いても音を出せます。参加した皆さんは、初めは穴を押さえながら息を吹き込むことに苦戦していましたが、ひとたび音が出ると大喜びしていました。

笙に挑戦する留学生の写真

 次に留学生6人が篳篥を体験。篳篥は小さな縦笛ですが、非常に大きな音を出すことができ、龍笛とともに主旋律を担当します。ひときわ存在感を放つ独特な音色で、雅楽と聞くと真っ先にその音色を思い起こす人も多いのではないでしょうか。直接息を吹き込むのではなく、リードをくわえ、振動させることで音を出します。参加者は奏者の指導で音を出せるようになると、全員同時に吹くなどして音色を楽しみました。

篳篥を吹く留学生の写真

 続く龍笛からは、留学生以外の参加者も体験を楽しみました。龍笛は横笛で、「天地を行き交う龍の声」を表すとされています。「天」の音は笙、「地」の音は篳篥です。吹き口を唇に沿わせ、直接息を吹き込んで音を出します。
 筆者も体験させていただきました。初めはなかなか音が出ず苦労しました。奏者に手伝ってもらいながら、まず下唇の下のくぼみに龍笛をはめ、上下にコロコロと転がし、うまく息を吹き込めそうな所を探ります。次に、ビンに細く息を入れるイメージで息を吹き込むと、「ピ~イイ~」という高い音を出すことができました。しばらく、音階を操る指孔をふさいだり、吹き込む息の強弱を変えたりして音色の違いを楽しみました。しかしひとたび口を離すと、また音の出る位置を探す作業からやり直し。一人ではうまくいかず、再度プロにお力添えいただいたことは言うまでもありません...

体験の様子

 最後は打楽器の体験。壇上に鞨鼓、鉦鼓、太鼓が並び、それぞれ興味のある楽器の所へ行って体験します。この頃になると参加者の緊張もほぐれ、リラックスした様子で、奏者から叩く位置や強さ、リズムを教わっていました。

打楽器体験の様子

 第三部は雅楽鑑賞。「平調音取(ひょうじょうのねとり)」「越天楽」「朗詠『嘉辰』(かしん)」「陪臚(ばいろ)」の4曲を演奏していただきました。優雅で神秘的な調べに、会場からは惜しみない拍手が送られました。

 参加した香港からの留学生?周蓮莉さんは「まずは何より優雅で壮大でした」と生演奏の感想を語りました。笙などの管楽器が竹で作られていることに触れ、「細い、太い、といろいろな形がありますが、別の音が出せる材料として楽器にしていて、古代の人はとても頭が良い」とその使い方に感心した様子でした。6種の楽器を体験し、「大学でこういった体験ができるのは素敵です。すごく貴重な学習でした」と振り返りました。

(取材?構成:茨城大学広報?アウトリーチ支援室)